強迫性障害(OCD)教室
強迫性障害について
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強迫性障害について
強迫性障害の患者さんを苦しめる
「強迫観念」と「強迫行為」

  B氏とC子さんに認められたこだわりの考えを医学用語では「強迫観念」、こだわりに関する不安を振り払おうとしてくり返す行動を「強迫行為」といいます。2人の心配の内容が全く異なるように、強迫性障害は患者さんによってこだわる内容は様々に異なります。けれども、共通していることがあります。それは冒頭にも述べたように、患者さん自身が少なくともある時点で「心配しすぎだ」「無意味だ」「周りの人からみたら、ばかばかしいことを悩んでいると思われてしまうだろう」などと感じていることです。これを「不合理性の認識」といい、強迫性障害を診断するときの重要なポイントの一つになります。
また、こだわった考えや行動は患者さんにとって苦痛な体験で、「こだわりを止めたい」と本人も願っていること、その意志に反して駆り立てられるように「こだわらざるを得ない」のだということ、なども患者さんに共通している重要な特徴です。これは強迫観念と強迫行為の定義そのものでもあります。
つまり、本人の信念にもとづいて、自らすすんでこだわりや快楽から離れられずに“はまってしまう”状態は強迫症状とはいいません。
強迫観念や強迫行為は米国精神医学会によって下記のように定義されています。
  <強迫観念>
 
具体例 反復的かつ持続的な思考・衝動・心像で,侵入的かつ不適切なものとして体験され,この障害の期間中に強い不安・苦痛を引き起こすことがある。
具体例 その思考・衝動・心像は,単に現実生活の問題についての過剰な心配ではない。
具体例 患者は,この思考・衝動・心像を無視・抑制したり,または何か他の思考・行為によって中和しようと試みる。
具体例 患者は,その強迫的な思考・衝動・心像が,思考吹入の場合のように外部から強制されたものではなく,自分自身の心の産物であると認識している。
  <強迫行為>
 
具体例 反復的行動(例: 手を洗うこと,順番に並べること,点検をすること)または心の中の行為(例: 祈ること,数を数えること,声を出さずに言葉を繰り返すこと)であり,患者は強制観念に反応して,または厳密に適用しなくてはならない規則に従って,それを行うよう駆り立てられていると感じている。
具体例 その行動や心の中の行為は,苦痛を予防・緩和したり,または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかし,この行動や心の中の行為は,それによって中和したり予防したりしようとしたものとは現実的関連を持っていないし,また明らかに過剰である。
  (参考:DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引)
では、強迫症状(強迫観念や強迫行為)の代表的な例を挙げてみましょう。
具体例
●汚染に対する恐怖
他人や動物など周囲のものから汚染されるという強迫観念から、汚染を避けようとしたり、洗浄行為をくり返す強迫行為を認めます。
例えば、
ドアの取っ手や電気のスイッチ、道路上の汚れ、床に落ちたものなどに触ることができません。ほこりや細菌、他人の血液や尿などの体液、犬猫鳥の糞便などが目に見えなくても少量ついているかもしれない、などと考えてしまうのです。意識して触らないようにしていても、「もしかしたら無意識に触ったかもしれない」などと想像してしまうだけでも強い不安に駆られて、不安が消えるまで洗浄や消毒行為をくり返してしまいます。外出して帰宅したら玄関から風呂場に直行して入浴しなければならないとか、外出着は玄関で脱いでビニール袋を二重にした中に入れて他の洗濯物とは区別して洗うとか、自分なりの「汚染防止対策」を決めて実行せずにはいられないこともあります。
一度思いついた対策法は、その必要性を完全に否定できる根拠がなければ採用しなければならないため、次第にエスカレートしていきます。
イメージ なお、不安を強める要因として細菌やウイルスなどに汚染されたかもしれないという疑いから死への恐怖感が呼び起こされるケースと、「汚い感じ」に対する極度の不快感から、思考の混乱がもたらされるケースがあるようです。
また、前者では自分の身を案じるよりも、汚染を伝播して家族や周囲に迷惑をかけてしまうことを恐れている場合も少なくありません。

●自分や他人を誤って傷つけてしまうことへの不安
自分が望んでもいないのに、誤って、または無意識に、他人を傷つけてしまうのではないかという強い心配です。
例えば、
車を運転しているときに、ちょっとした振動があると「今、誰かをひいてしまったのではないか」と不安に思い、一回確認しただけでは誰もひいてないという自信が持てず、何度も確認したり、それでも確信が持てないと警察に出頭しようと思いつめたりします。
また、道を歩いているときに、お年よりや子供にぶつかって怪我をさせたりはしないかと不安に思い、通行人と必要以上に距離をとって歩くこともあります。

●物の存在、規則性、正しさへのこだわり
イメージ2文具や本などが無造作に置いてあるという状況において、物が「ここにある」という確かな実感が得られず、何度も何度も物を置きなおさずにはいられないという症状を訴える患者さんがいます。また、「左右対称」や「正しい順序」など、一定のルールを守って物が存在することを追及せずにはいられないという症状もあります。もしも物の存在や配置が「不確かだ」「ちゃんとしていない」などと感じると、なんとも居心地が悪く不安でそわそわして落ち着きません。このため整理整頓に非常に多くの時間や労力を費やしてしまいます。家族でも自分の部屋には入れたがらないことも少なくありません。なにか物の配置に変化がおきてしまったのではないか、など考えると混乱するためです。
●保存へのこだわり
本当はもう不要だと分かっているごみでも捨てることができない状態です。ごみと一緒に大切なものまで捨ててしまうことを恐れたり、ごみという判断に自信がない、などの不安を伴っていることもあります。このような強迫症状が強い場合は、部屋がごみだらけになってしまうこともあります。

イラスト3
●不謹慎な考えに対する罪と罰への不安
自分の本心とは全く逆のことが浮かんできて、自分はなぜそんなことを思ってしまうのか分からずに苦しむ状態です。
例えば、
交通事故の現場を見て、本当は心から同情しているのに全く逆の雑念(「ざまぁみろ」など)が浮かんできて、罪の意識にかられて自分を責めたり、罰が当たることを恐れたり、自分の行為を何度も心の中で謝り続けたりします。また、不吉な空想をしてしまうと、「空想は願望のひとつなのではないか」「強く願うことが実現しやすいというのなら、不吉な空想だって実現しやすいのではないか」などと恐れることもあります。この不安を帳消しにするために、逆の内容の空想を思い浮かべて帳消しにしようとします。「不吉な空想をしているときに行っていた行動は、よい空想をしながらもう一度やり直さないと本当に不吉なことが起きるかもしれない」という発想から、同じ行動をひたすら繰り返す場合などです。周囲から見ていると同じ行動を無目的に繰り返しているように見えるのですが、本人は必死なわけです。同じ動作を繰り返している患者さんが、家族に声をかけられて怒り出した、という話はよくききます。本人は動作を反復しつつ頭のなかをよい空想だけで一杯にしておくことに専念しているわけですが、そこで家族から声をかけられると「いまの瞬間に何か悪い空想が混じってしまったかもしれない」とか「努力が台無しになった」と感じたりするのです。
強迫症状の内容は患者さんによってさまざまに異なります。将来は、強迫性障害がいくつかのタイプに分類されるかもしれません。そして、原因や治療に関して全てのタイプに共通する点と、各タイプによって異なる点が明らかにされていくかもしれません。


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