「うつ」を克服した人達
● 小川 宏さんの
体験談
● 藤臣 柊子さんの
体験談
● 竹脇 無我さんの
体験談
● 倉嶋 厚さんの
体験談
● 音無 美紀子さんの体験談

うつ病は辛かったけど、健康で生活も満たされていたときには見えなかったものを教えてもらった気がする
 「そうだ、いいことを教えてあげる。」と、竹脇さんがうれしそうに話し始めたのは、お姉さんの家で飼っていた“パクちゃん”という金魚の話だった。「うつの人はね、金魚を飼うといいよ。2匹くらいね、ちいさいときから飼うの。えさも3〜4日に1度やればいい。それで、えさをやるときには必ず、金魚鉢をコンコンとたたくの。そうやって餌をやりつづけて1か月くらいすると、コンコンとたたくだけで金魚が口をあけて浮いてくる。それがすごくかわいいんだよ。本当にいじらしいよね。」

 最初はおっくうだった餌やりも、次第に楽しみになりはじめたという。小さなことでもいい、無理をせず少しずつ何かを始めてみるのが、うつには大切だと言う。「うつの間ずっと寝ていると、不思議なことに、仕事とか人間関係とか、いろんなことが見えてくるんだよね。それにさ、ずっと暗い部屋にとじこもっていると、だんだんばかばかしくなってくるもんだよ。なんでこんなことやっているんだろうって。そうすると、まずはカーテンを開けてみようとか、部屋の空気をいれかえてみようとか、ちょっとあいつと話してないから話してみよう、とか思うわけ。それで、なんだか自然と自分の中に生活が戻ってくる。」

 うつ病の経験から、生き方や仕事でそんなに悩むことはないという竹脇さんは、同じ症状で悩み苦しむ若者たちにもメッセージをくれた。「若いときは、人生ってたいしたことがあるって思って、肩に力が入ってたけど、今になってみたら意外とたいしたことないんだよね。だから悩むことなんてない。
自分で夢やしたいことを決めればいいの。小さなことでもいいんだよ。さっきの金魚の話みたいに、帰ってきたらちょっとエサをやるとかさ。そんなことでもいいんだ。小さい夢をたくさんもっていれば、夢はいずれ大きくなる。そうやって自分で夢をつくればいい。人間、生きてる限りきっといい人に会えるし、いいことがあるよ。今は、うつ病で辛いかもしれないけど、うつはね、時間がかかっても“ちゃんと治る病気”なんだよ。ゆっくり休んで、ちゃんと治療を受ければね。」

 竹脇さんが男っぽい口調で語る、言葉のひとつひとつには、温かさが滲み出る。それはきっと、うつ病と闘い続けてきた竹脇さんが話すからなのだろう。

 長いインタビューが終った後に、竹脇さんがこれから演じてみたい本の話をし始めた。それは、今までの画面をとおしての竹脇さんからは想像もできない、ちょっとニヒルな悪人が主人公の話。その悪人が最後に見せる正義と男気が気に入ったと、ストーリーを延々と少年のように目を輝かせながら語る姿が印象的だった。11月からは、新生/竹脇無我の初舞台ともいえる「妻たちの鹿鳴館」が明治座で始まる。無理せず自分のペースで治しながら意欲的に仕事にも復帰しつつあるようだ。

「凄絶な生還」-うつ病になってよかった- 竹脇無我著
監修:上島国利 先生

「凄絶な生還」
-うつ病になってよかった-    

マキノ出版
定価:1,300円(税別)

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