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「強迫性障害の治療と家族のサポート」

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第3回−「強迫性障害の治療と家族のサポート」

STEP4
  家族は、患者さんが強迫性障害の治療にあせらずとり組めるような環境づくりを工夫してあげてください。治療は時間がかかり、根気も必要なため、「一日でも早くよくなって」というような励ましは慎重にしたほうがよいでしょう。だからといって、あからさまなあきらめは改善を遅らせることにもつながるため、「時間はかかるけど、治療すれば、少しずつ、じわじわと改善していく病気だと聞いたので、あせらず一歩一歩取り組んでいこうね」というような声をかけて、支えてあげてください。
また、これまでよりもよくなった点があれば、患者さんは自覚していないこともあるため、「とてもよくなった点があるよ。治療に取り組むのは大変だろうけれど、成果が上がっているのは確かだと思う」と、努力を言葉にして評価してあげてください。そのような評価が達成感となって、患者さんは、またがんばれるのです。しかし、「次はもっとがんばろう」と回復を急かすことは避けましょう。「治療にとり組む大変さを家族は分かってくれていない」、と患者さんに感じさせてしまうためです。強迫性障害の治療は、「焦らず、じっくり」が基本です。言わば、体力をつけるための筋力トレーニングのようなものかもしれません。トレーニングをしたからといってすぐに体力がつくわけではなく、根気よくとり組むことで着実な力がつくのと同じような感じです。そして、家族は、優しく見守り続けるマネージャーのような役割と言えるのではないでしょうか。治療効果を高めるために家族のサポートはなくてはならないものなのです。イメージ1
また、ときには、治療をサポートするだけでなく、患者さんの健康的に保たれている能力を刺激することも有効です。強迫行為や強迫観念が少し減り、時間的、体力的な余裕が出てくれば、外出したり、スポーツをしたりして一緒に楽しむ時間を持つこともよいでしょう。
最後に、治療上の注意点として最も重要なことは、患者さんの強迫行為になるべく手を貸しすぎないようにすることです。強迫行為には、徐々にエスカレートしていく怖さがあります。患者さん一人で取り組む強迫行為が限界に達したとき、家族が強迫行為を手伝わなければそこで歯止めがかかるところを、家族がよかれと思って手伝うことが裏目に出て、強迫行為がさらにエスカレートしていき、そのうちに家族中を巻き込んだ複雑な強迫症状が形成されてしまう場合があるのです。ただし、強迫行為の手伝いを頼まれたときの断り方には最大限の慎重さを要しますので、ぜひ医師に相談してください。「辛そうだから本当は手伝ってあげたいけれども、強迫症状を手伝うことは、病気を悪化させてしまうことになるという医学的な話を聞いたので、今は手伝うことができない。その他のこと、例えば食事や睡眠、気分転換など家族が手伝うことで健康によいことであれば、こころから応援したいと思っている」など、思いやりをこめて説明してあげることが必要です。ときには、本人の前で、医師から家族に、「強迫症状は手伝わないようにしてください」と指示してもらうことが必要なケースもあります。

最後に 家族のサポートが患者さんの治療の大きな支えとなったケースをご紹介します。
 
〔症例〕
30歳の専業主婦のE子さんは、戸締りの確認を何度くり返しても安心できないので、夫が不在のときには外出しないで閉じこもっていました。
たまに外出するときには、夫に電話して自分の戸締りのやり方を説明して、「大丈夫だと思うか、間違っていないと思うか」と何度も質問して、夫に「絶対大丈夫」と保証してもらわないといけませんでした。夕飯の買い物なども本当は本人もやりたいのですが、一人の外出ができないために夫に代わりに行ってもらっていました。でもE子さんの要望の細かさに完全に応じるのが不可能なこともあり、夫婦喧嘩も少なくありませんでした。こんなに妻のことを心配して自分なりに支えているのに病気がよくならないのはなぜだろう、と夫も苦しんでいました。
しかし、夫婦で病院を受診し、医師からの説明を受けて、夫婦は納得しました。
家族が強迫症状を手伝うことで、病気の症状をむしろ悪くさせてしまうことがあると知ったのです。がっかりする夫に医師は、「ご主人の心の支えがあったからこそ奥さんは治療にたちむかう勇気が持て、受診もできたのです。これからもご主人の力が奥様の治療に大きな意味を持ちます。強迫症状の手助けから、強迫症状をやらない手助けに方向転換をして大きな一歩にしましょう。そして、奥様は、強迫観念の不安に対して今までのように強迫行為で不安を消すのでなく、薬物療法や行動療法の力で不安に対する適切な対処をしていくようにしましょう」と助言しました。この日を境に、夫はE子さんへの対応を少しずつ変えていきました。E子さんは戸締りのときに不安のあまりに、つい夫に電話をしてしまうことはしばらく続いていましたが、夫は「不安で電話をくれたんだね、治療のためだから、確認の手伝いはできないけど、応援してるよ」と優しく伝えるように心がけました。
イメージ2また、電話がなかったときには、帰宅してから「今日は電話をくれなかったけど一人で外出できたの?それはすごい努力だね、今日はもうゆっくり休んだら」など、必ずねぎらいの言葉をかけるようにしていました。E子さんは薬物療法と行動療法の併用により少しずつではありますが着実に快方に向かっています。

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