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第2回−「職場のうつ」

[基礎編]職場でうつに気が付いたら、早めに治療!

  ○ 一人で悩ませない、
相談できる状況をアドバイスする


うつは早期に適切な治療を受けることで治る病気です。しかし、うつになる患者さんはまじめで責任感の強い人が多く、本人もおかしいとは思いながらもがんばり続けてしまいます。そのため、社員の様子の変化に気が付いた場合は、少しでも早く専門の医師に相談できる環境をつくってあげることが必要です。
専門の医師に相談できる環境をアドバイスする方法には2つのケースがあります。



1 産業医が社内にいる場合
  診療所が社内に併設されており、社内に産業医や看護師・保健師などの健康管理スタッフがいる場合は、先生に相談するように勧めてください。その社員にどうようなケアが必要か適切な判断をしてくれます。
また、必要にな時は専門医への紹介も行なってくれます。

2 産業医が社内にいない場合
  社内に健康管理スタッフがいない場合でも、相談できるシステムがあります。

・ インターネットを利用し、会社や家から通いやすい専門医を探すことができます。

・ 会社や健康保健組合、労働組合などが契約している社外の相談機関やEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)などを活用して、こちらの相談窓口に一度相談し、その後契約医療機関への紹介やケアの方法をアドバイスを受けることができます。(EAPについての詳しい解説は⇒こちらをクリック


何よりも大切はことは、職場での様々な要因が引き金となってうつを発症した社員をそのままにしないことです。また、努力が足りないなどと精神論で片付けないことです。
管理者がうつについて正しい知識を持ち、職場環境の改善の他、適切な治療が受けられるようサポートしてあげることです。


  ☆ 大切なことは、決して他人ごとと思わないことです。 あなたの周りで、こんなことはありませんでしたか?

 
【42歳、管理職、Aさんの場合】

 入社以来、20年間、営業部で現場一筋に勤務してきたAさん。営業成績は常に上位にあり、まじめでがんばり屋の性格は、営業部でも評判でした。この度、会社で新たな事業計画を展開するために本社に「企画部門」が設置され、Aさんは営業企画課長に抜擢されました。

 担当業務は、国内に留まらず、海外事業部まで含めた大規模な事業展開を企画するもので、他部門間の調整と綿密なアセスメントを必要としており、営業現場一筋に生きてきたAさんにとっては、全く別世界の業務で戸惑うことが多かったと言います。しかし、元来、真面目でがんばり屋のAさんは、残業と休日出勤を続けながら、何とか業務をこなそうとがんばり続けました。

 その結果、昇進して3ヶ月頃より、仕事が手につかなくなり、業務が遅延することが多くなりました。そして、そんな自分を情けなく思うようになり、「自分は周囲に迷惑ばかりかけている。申し訳ない」と自分を責めることもしばしばあったと言います。

 自分の現在の状態について、上司に相談したところ、「君なら大丈夫だ。がんばれ!」と励まされました。Aさんは会社の期待に応えられない自分を責め、屋上のフェンスの側で呆然としているところを、たまたま屋上にいた従業員に見つかり、会社の健康管理室に行くことになりました。産業医の先生との面接で「治療が必要な状態」だと言われ、精神科への受診を勧められました。

 産業医の先生より紹介を受けた精神科を受診したところ、「うつ病」との診断を受けました。Aさんは約1ヶ月間入院治療した後、2ヶ月間の自宅安静と薬物療法を行い元気を取り戻しました。以前のようにむやみに無理をすることがないよう気を付けながら徐々に職場復帰し、今では通常通りの業務をこなせるまで回復しています。

【35歳、独身、技術職(開発・設計)、Bさん】

 従来、明るく、友達も多い性格のBさん。大学院卒業後、新製品の開発を担当していましたが、まじめで仕事をきっちりするところを評価され、8ヶ月前に同期で最初の主任へ昇進、まとめ役として張り切って仕事をしていました。製品の納期が遅れていたため、残業や休日出勤が多く、連日深夜まで仕事。上司や顧客との付き合いも多く、多忙な毎日でした。

 4ヶ月程前、製品に欠陥が見つかり、グループ全体がさらに忙しくなりました。これまで仕事を完璧にこなしてきたBさんですが、期限に間に合わないことが多くなり、上司から仕事の進め方に問題があるのではないかと指摘されるようになりました。自分の休みを削ってでも、製品を納品できるように努力してきたBさんにとって、このような上司からの指摘はひどく自信を失うものでした。

 この頃から、顔色が悪くなり、従来の覇気もなくなりました。Bさんの様子の変化に気が付いた同僚が、Bさんを飲みに誘って話を聞いてみましたが、Bさんは「大丈夫ですよ。忙しいので疲れているだけですよ。みんな大変ですからね。」と答えるのみ。確かに同じ部署で働いている同僚自身も、最近の多忙さに疲れていたため、その場は「あまり無理するなよ。」と言うに留まりました。

 その後、遅刻や早退などはないものの、以前と違った活気のない状態が続いているBさんを心配した同僚は、Bさんの上司に一度面接するようにお願いしました。

 上司が話を聞いてみると、主任に昇格した2ヶ月後頃からからだのだるさを感じており、製品の欠陥が見つかった後は心身両面でかなり辛かったと話しました。

 「休みたいとは思ったのですが、周りが皆がんばっているので、自分だけが休むと評価が低くなるのでは…と思って休めませんでした。疲れているはずなのに夜は眠れないし、朝も早く目が覚めてしまうのです。食欲もなくなって、食べてもおいしいと感じなくなりました。最近は、仕事も思ったように進められないのです…。」
話を聞いた上司は心配になり、Bさんに産業医に相談するように勧めました。

 産業医面談の結果、「うつ病」が疑われた為に、外部の精神科を受診することになりました。精神科専門医に薬物治療としばらくの間の休養が必要であることを説明され、会社を休職し、自宅療養となりました。治療を開始してしばらく後、「ご迷惑おかけしてすみません。だいぶ元気になったので来週から出社したいと思います。」とBさんから上司に電話があり、産業医との復職面談の結果、作業負担を軽減しながら復職することになりました。

今ではうつ病だったころがまるでうそのように元気に働いています。

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